過去の質問と回答

Q:野外病院環境の輸血は、全血製剤で、新鮮血が多く、放射線照射が行えず、近親者・血液者からの供血が多いという、輸血後GVHDのリスクがとても高い状況である。JDRでは輸血後GVHDのリスクを減らすために、供血者選定に加えて(なるべく近親者を除外する)、白血球除去フィルターのついた自己血採血用血液バッグを使用する計画を考えたが、この計画はいかがか。日赤のフィールドホスピタルでは白血球除去フィルターの使用は検討しているか?

A:白血球除去フィルターの導入はしておらず、その予定もない。使用するとすれば供血者からの採血時ですが、現在日本で販売されている白血球除去フィルターは非常に複雑な構造をしており、フィールドホスピタルで使用する状況に合ったものではなく、また血液センターのみ購入可能となっている。過去の国際赤十字の災害、紛争いずれのフィールドホスピタルでも資機材には入っていない。ちなみに 過去にフィールドホスピタルでGVHDを経験したことはない。(日本人よりもヘテロな集団なので確率が少ないから?)

Q:研修資料に「海外ではRh(-)の比率を考えると妊娠歴のある女性では抗D(+)が日本より多いと想像できる」との記載がある。Rh(D)式血液型不適合妊娠対策として「抗D人免疫グロブリン製剤」の使用についてはどうか。

A:検討していない。フィールドホスピタルで日本のように妊婦検診を受けて父親と本人の血液型がわかっている妊婦は来ず、ほぼ全例、もうすぐ生まれそうという状態で来る。また仮に事前に妊婦が来たとしても父親も連れてきて、といって血液型検査をすることは実際には無理。日赤要員が参加した直近の災害時のフィールドホスピタル(タイプ2)は、2021年9月-11月まで展開していたハイチ地震で、ここで扱った分娩は2ヶ月で113件。ここでルーチンに妊婦の血液型と夫の血液型、あるいは新生児の血液型を調べるのは113件×2 or 3の血液型検査をすることになり、限られた資源(と時間、労力)をここに投入する価値はないと考える。

Q:落差方式による自己血回収バッグへの採血では、途中で止まってしまうことがあると習った。そのような場合チューブの血液が凝固しないように採血を中止してローラーを使ってバッグ内に血液を移動させるべきか。それとも溶血を起こすためにやめるべきか。もしチューブ内で凝固してしまうと、交差適合試験の供血者側検体として使えなくなるか。

A:チューブ内の血液が凝固していなければ、ローラーを使うのはあり。凝固していればローラーは使用不可。その場合、(日本では)バッグに入っている薬剤の量(CPDA液)との関係で血液量があまり少ないと問題になるということから、400mLのバッグで300mL以上すでにたまっていれば使用可能、

Q:輸血検査を行う上で遠心分離機が前提となっているが、輸出貿易管理令の関係で、遠心分離機の輸出は難しいと聞いたことがある。輸出規制で問題になるのは核兵器の製造に転用可能な遠心分離機と思うが、輸血検査に使う遠心分離機は問題ないか。

A:質問のとおり、輸出入には様々な規制があり、主に兵器転用に関する輸出貿易管理令もそのひとつ。日赤のフィールドホスピタルに入れている遠心分離機については、メーカーから同管理令の適応外という確認をとっている。

Q:手術、分娩に際して、輸血同意書を取得する対象とタイミングについて。Major Surgeryの際に、全員輸血同意書まで取得するというのは現場の手間が大きいが、事前に血液を準備するような手術であれば輸血同意書も手術・麻酔同意書と合わせて取得しておくのがよいか。分娩では全員事前に同意書を取得するのか。産科の緊急輸血の場合は、手の空いた人間が口頭で本人・家族に説明・同意取得を行って、可及的速やかに輸血同意書にも記載してもらうのか?

A:日本とは異なり、多くの場合輸血する血液は患者さんの家族、友人からとることが多いので、過去のフィールドホスピタルの経験ではその時点でとることが多い。緊急時などは実際にはケースバイケース。 手術での輸血というのは稀なので、手術同意書と同時に輸血同意書をとることはない。産科での緊急輸血は質問に書かれているとおりの流れになるであろうが、この状況にあたる超緊急輸血のフィールドでの経験はわれわれにはない。

Q:輸血供血者を受け入れるかどうかの判断を行うフローチャートが大変わかりやすいが、このフローチャートに従った完全自動判定になるのか、実際にはフローチャートを指標に、誰かの職責で最終判定(Yes/No)を判断するのか?

A:供血者へのファーストコンタクトは看護師になるので、判定は看護師がフローチャートに沿って自動的に判断、特殊なケースで迷う場合は診療責任者(多くの場合ヘッドナース)の判断になる。

Q:今回のトレーニングで、交差適合試験はできるというより難しさとどれだけ時間がかかる手技か体感したという印象で、一度きりの経験では、現場で責任をもって結果を出すには経験不足と感じた。 研修参加後のスキル維持・向上が重要と感じる。その部分は戦略として何かあるか? 各自で検査室に通うなど参加者の主体性にゆだねられているが、組織として現場で確実に手技を行える人を保証する体制をどう運用するのか検討されているか。

A:今回のトレーニングの復習のために動画を含めて詳細な資料を作成したが、研修後については当面本トレーニングを年1回開催予定であるので、次回オブザーバー参加をして確認する方法がひとつ、また大阪赤十字病院では輸血部がいつでも練習に来てよいという協力体制を敷いているので、各自の自施設の輸血部にお願いするのもひとつ。当院輸血部には、現地で活動中、(ネット環境が許せば)オンラインサポートもお願いしている。なお、カートリッジに検体を落とせば機械的に処理してくれる(オーソ バイオビューワークステーション)、試験管法よりも手技と判定が容易という装置も市販されているので、この導入を検討するのもひとつと考える。

Q:もし日本で災害等々起こり、タイプⅠ~タイプⅢを設営し診療開始、レントゲン撮影する事もあると思うが、今の日本の法体系ではEHではレントゲン撮影は難しいのでは?何か撮っても良い根拠があるか。

A:「災害時の救護所等におけるエックス線撮影装置の安全な使用について(平成21年1月7日)」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4868&dataType=1&pageNo=1
大阪赤十字病院は国内用のフィールドホスピタルも維持管理しており、この指針に沿って運用、2016年熊本地震では、全域停電となった南阿蘇で小規模のフィールドホスピタルを展開し、84件の撮影を行った。

Q:医療廃棄物(液体)の処理に関する質問。 汚染した手術器械の洗浄過程で生じる、廃液(汚染した洗浄液)はどのように処理するか。

A:いったん排水タンクに貯めて塩素処理をした後、排水する。

Q:研修で日赤EHでは次亜塩素酸などの消毒薬ではなく中性洗浄剤を使うと聞いた。塩素を使わない理由は?

A:器具を痛めるため。錆びやすくなる。

Q:バーチャルEHのレントゲン室横のオフィスの画像でホワイトボードがあるが、これはどうしたら手に入るか?

A:これは野外で使用するホワイトボードとして当部署と東洋物産(株)が、昔共同開発したもので、東洋物産から入手できます。担当者連絡先:吉井仁志 <yoshii@toyo-bussan.co.jp>

Q:「線量や撮影部位などを、患者の主訴や症状、体型などから推定する」とあるが、(カルテ閲覧などで)その後の患者への診断や治療内容を確認できるのか?

A:電子カルテ(TOMBI)が導入されることにより、患者入室前に主訴や症状を詳しく把握することは可能になった。オーダー画面や従来の紙オーダーでも、依頼医による特記事項の記入欄があるため確認できます。体格や患者状態は実際に撮影室に来た時点で最終確認をして撮影条件の最終決定しています。

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