コンセプト/概要

Emergency Response Unit (ERU)の概念

 国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)が海外の人道危機に対して支援をするツールとして1990年代末に構築した。主に自然災害などの人道危機に対し、平時から必要な物資や資機材、人材をユニットとして用意しておくというフレームワークである。
 自然災害に対応するツールであるので、ERUにはBHC(診療所)やHospital(病院)のほか、WAT/SAN(水/衛生)、Logistics(ロジスティクス)、IT/Telecom(通信)、Camp(宿舎)などさまざまな種類があり、世界各国の赤十字社がそれぞれ得意分野のERUを保有し、発災時には、被災国赤十字社(赤新月社)のニーズと要請に基づいて適切なタイプと数のERUを出動させる。

病院ERU(Emergency Hospital)の概要

 日本赤十字社(日赤)は、国内に病院を多く持つ特性から、緊急救援では医療分野での支援を主に行っている。

 日赤は従来より上記のERUのうち、診療所ERUであるEmergency Clinic(EC)をシンガポールと熊本赤十字病院地下倉庫に1基ずつ計2基保有しており、比較的規模の小さな災害にはこれらを出動させる。
 一方病院ERU(Emergency Hospital)は、その資機材を大阪赤十字病院(電気関連は名古屋第二赤十字病院)に保管しており、上記診療所ERU(EC)1基、もしくは2基と合わせることで病院ERU(EH)となり、大規模な災害に出動させる。

 WHOのEmergency Medical Team(EMT)のフレームワークでは、緊急医療支援チームをタイプ1(巡回診療型、固定診療所型)からタイプ3(高次病院型)に大きく3つに分類している。病院ERU(EH)はタイプ2(病院型)の最低基準を満たしているが、これよりも大規模で高機能な野外病院として長期間展開することができ、言うなればタイプ2.5のイメージである。また電気や給排水、キッチン、ランドリーなどのインフラ部分は、より大規模な病院となっても耐えられるよう設計しており、テントとベッドを追加すると最大100-120床規模まで拡張することができる。これは対象人口10万人の被災者に対応することを想定したものである。

 病院ERU(EH)では診療所ERU(EC)の機能に加えて、入院を伴う手術や処置(四肢外傷のすべての手術、頭部、体幹部のダメージコントロール手術、胸腔持続ドレナージ、骨折に対する牽引治療など)、産科対応(分娩、帝王切開など)、輸血、短期間の人工呼吸管理を伴う集中治療も可能である。最低4ヶ月、最長1年以上の展開が可能な設備である。